バイオレンスの存在意義

 

905071_34672630.jpg

バイオレンスというと、血がドバッ! と噴出したり、四肢が取れたり、
強烈なインパクトを人に与えますね。


 私は映画の中でもクライム・バイオレンス映画、というジャンルが好きなの
ですが、どういう映画があるかというと、タランティーノ監督の
「レザボア・ドッグス」」、「パルプ・フィクション」、ちょっと前だと
「キル・ビル」とかですね。

 ガイ・リッチー監督の「SNATCH」もそれ系です。

 ブラッド・ピットつながりだと「ファイト・クラブ」もそうですね。


 デンゼル・ワシントン主演の「トレーニング・デイ」とか、秀逸な作品です。

 あと戦争映画全般はバイオレンス映画に分類されるでしょう。


 日本だと北野武監督の「その男、凶暴につき」とか「Hanabi」とかですね。

 亡くなった深作欣司監督も、その昔ヤクザ映画で男性のファンを多く作り
ました。


 男は戦うところに男らしさ・強さを見出す傾向があり、今のゲームも
根底に「戦う」という概念が根強くあるのは、そのためです。

 だから、バイオレンス映画は男性にはけっこうウケます。

 逆に女性はそのよさが分かりません。

 これは生得的なものなので、しょうがないことです。


 日本の場合、風土というか社会通念としてのバイオレンスの忌避が
強く、アメリカ映画にあるような強烈な表現は作られません。

 「ダイ・ハード」みたいに銃で人質の頭が吹っ飛ぶ、なんて描写が
作られないわけですね。


 その代わりに犬の大冒険とか、日常の恋愛風景とか、大河ドラマとか、
青春映画とか、日本の美とか、そういう映画の嗜好が映画業界にあるようです。

 SFとかサスペンス映画とか、日本ではめったに作られませんし。


 この現象に対しての私の意見ですが...。

 はっきり言います。


 私はこういう嗜好は、はっきりいって聴衆にとって薬にもならないし、
害にもならない、正直言うと、なんの意味もない作品を多く生み出すことに
つながっているとさえ、思います。


 刺激のないところに、人の人生を大きく揺り動かすような作品はない!


 はっきり言ってしまうと、今の日本の映画業界とか、ゲーム業界の
バイオレンス表現に対する自主規制のあり方というのは、日本の作品を
ダメにしていると思います。

 ダメダメ、ですよ。

 去勢された犬みたいな状態だと思います。


 おそらくは先輩監督の影響力が大きいんではと思うのですが、
まあそれはいいとして。


 日本の文化的な美的感覚や、恋愛映画や大河ドラマを否定するわけでは
ないんです。

 平和なキャラクターが出て来る、全年齢層対応のゲームはもちろん
あっていい。

 PTAが優良のハンコを押すような作品を全然否定しません。

 

 ただ、「それだけでいいのか?」、と言いたいわけです。

 それでいいのか? と。


 問題を認識しなければ、改善はありえない。

 今の無菌状態の温室的な作品だけが許されるというのは、問題です。


 なぜ問題か?

 それは、その当りさわりのない無菌状態の作品の作り方だと、

 

 全然メッセージが伝わらないからです。
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 確実に、伝わらない。

 人に衝撃を与え、感情を揺さぶり、その人のその後の人生に
決定的な影響を与える作品を作るには、

 

振り幅
~~~~~~


が必要なんです。

 それがあってこそ、メッセージが人の心の奥深くに入っていく。


 振り幅とは、「ヒットゲームを作るためのゲームデザインパターン」には
詳細を書いているのですが、要するに、メディアを使って人に衝撃的な体験を
してもらうには、物事を片方の端から、対極にある片方の端まで、一気に
移動させる必要がある、ということなんです。


 これだとわからないと思うので、分かりやすく例を挙げますね。


 例えば、いつもテストで50点を取っている生徒がいる。

 その生徒が頑張って、100点を取った。

 するとまわりは「おお~がんばったな」と、賞賛するわけですが、
これが、いつも0点ばかり取っていた生徒だったら、どうでしょう?


 「ええ? おまえ、いったいなにが変わったの?」となるはずですよね?


 しかしさらにこれが、学校にろくに来ないので、漢字もろくに書けず、
割り算もわからない、暴走族で特攻隊長として有名だった、誰からも
諦められていた生まれつきのバカが、いきなり坊主頭できっちりとした
学生服に身を包み、学校に現われ、テストで全教科100点満点をかっさらって
いったら、まわりの反応はどうでしょう?


 「~~~~~~~~~~!!」

 「バ.............................................!!」


 驚愕の事態ですよね?

 その噂はまたたくまに学校中に広がり、隣の学校にまで伝説として伝わり、
さらにはその成功体験が書籍として出版されても、おかしくはありません。

 書籍が出れば全国的に有名になる可能性だってあります。

 

 最悪が、最高になる。
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 これが、振り幅です。

 だんだんと、私の言いたいことが分かってきたでしょうか?


 バイオレンス描写も、同じなんです。


 すべての物事の中には、その対極的なものが、影、もしくは光として
存在する。

 

 暴力の中には愛が。

 貧乏の中には裕福が。

 生の中には死が。

 優しさの中には残酷が。

 絶望の中には希望が。

 

 これを哲学では止揚、アウフヘーベンといいます。

 対立する概念から、新しい答えを見出すという意味です。


 この哲学的概念を知っている人だけが、自分が表現したいものを強く
伝えることができます。


 強烈な愛を表現したいと思ったら、強烈なバイオレンスをまず表現する
必要がある。

 生の喜びを伝えたいのなら、狂わんばかりの死を伝える必要がある。


 それをするからこそ、表現物は頭からカミナリを食らったような衝撃を
生むんです。


 映画でも、ゲームでも同じです。


 だから、私はこの表現手法を去勢している日本はおかしい、というわけです。

 この手法を使わずに、世界に影響力を持てるわけがないんです。

 

 本当に伝えたいものがあるなら、その逆をまず表現する必要がある。

 

 ヒットした作品を思い出してください。


 アカデミーを賞総なめした映画、「シンドラーのリスト」はどうでしょうか?

 荒れ狂うユダヤ人の大虐殺の中で、シンドラーが持っていた人間愛が
光り輝きましたよね?


 アカデミー賞後部門受賞の映画、「プライベート・ライアン」はどうでしょうか?

 ひとりの人間を救うために、激しい戦闘で多くの人間の命が失われたあと、
救われた一人の人間の命の重さが、どれほど価値のあるものになったでしょうか?


 すべて、あなたは体感しているはず。

 思わず涙してしまう感動が、その中にあったはずです。


 漫画の「ベルセルク」はどうでしょうか?

 仲間をすべて失った絶望の中から、希望を掴もうとしてもがく者を
描いていますよね。


 ゲームも同じです。

 RPGは、なんの装備もない最悪の状態から、最高の装備を得るために旅を
します。


 RTSは、最初の貧弱なユニットだけだったのが、30分後には敵陣を
一瞬で消し去るユニットを生み出します。


 ほとんどのゲームは難易度をエスカレーションさせて、興奮を最高潮に
持っていこうとします。


 ハリウッド映画は、シナリオの書き方を、この「振り幅」を基本に
持っています。


 ハリウッドではこの基本構成を「三幕構成」と言います。


 平凡な主人公が、アクシデントに合い、非常識な世界に突き落とされる。

 そしてその最悪の状況からなんとか脱出するべく、奮闘する。

 ついには、その最悪な状況から脱出し、最高の状態へと落ち着く。


 このカタルシス(浄化)を味わうプロセスの中に、振り幅が使われて
いますよね?


 ということで、あなたがもし、なにか表現物を作り、それを自己満足だけで
なく、広く世間一般に認めてもらいたいと思うのであれば。


 「振り幅」を使ってください。


 バイオレンスを、効果的に使ってください。


 あなたが一番大切だと思っているものを伝えるのに、必要ですから。


 ヒットゲームを作るために、必要ですから。

 

 

このエントリーをはてなブックマークに追加


期間限定企画「中毒ゲームデザイン・トレーニング」
■中毒になるゲームの秘訣はあなたがド変態であること?
現在1927名の方が登録中。
期間限定でゲームデザインについての講座を特別プレゼント。

■音声1:粘りについて
ゲームにハマりを生み出す要素「粘り」を入れる方法とは?
あなたの作るゲームにも「粘り」を取り入れよう。

■音声2:インパクトについて
 ヒットゲームのトリガーとなっている「インパクト」の作り方とは?
「インパクト」を取り入れて、あなたのゲームにヒットの可能性を埋め込もう。

■ほかにもこんな内容を音声でお届けします
・練り上げられたゲームデザインをする秘訣
・間違いのない面白さのコアを盛り込む方法
・ゲームがヒットする原因を盛り込む方法
etc.

■サンプル音声、登録はこちらから。



トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: バイオレンスの存在意義

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://n2-interactive.com/mt/mt-tb.cgi/157

コメントする

[[img(http://x8.mikosi.com/bin/ll?095447901)]] [http://x8.mikosi.com/bin/gg?095447901 アクセス解析]