ポジショニングを成功させる要素

 

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さて前回、ポジショニングについて書きましたが、詳細を知りたいという
要望がかなり多く寄せられましたので、続きをお送りしたいと思います。

 要望をくれたみなさんありがとうございました。

 ひとこと書かれていた励ましの言葉にホント元気を与えられてます。


 ではいきましょう。

 ポジショニングにはを成功させるには、3つの考えておくべきことが
あります。

 その3つとは、

1・リサーチ
2・ターゲッティング
3・エモーション・トリガー

です。


●1・リサーチ

 リサーチとは、調査のことです。

 なにを調査するのか? というと、ひとことで言うと


「業界勢力図」


です。

 これはなにを目的としているかというと、ナンバーワンになることが
目的です。


 ナンバーワン以外は誰も覚えないからです。


 できうればゲーム全体でナンバーワンを狙いたいところですが、
中小のゲームデベロッパーやインディデベロッパーだとそうもいきません。

 大手という手ごわい競合がいるからです。

 リサーチでは、こういう競合の存在を調べるわけです。


 先行者がいると、それに追いつくには体力がいります。

 ですので、よほど勝てそうでない限りそこでは勝負しないわけです。


 で、どうするかというと、もっと細かい区切りを考えます。


 例えば各ジャンルでのナンバーワンを狙います。

 パズルで一番、シューティングで一番、アドベンチャーで一番とかですね。

 で、これでもさらにまだ強い競合がいるのなら、もっと絞っていきます。

 落ちものパズルでナンバーワン、横スクロールシューティングでナンバーワン、
などという風に。


 もしくはもう1つの手段があります。

 これは前にもよく言っていたことですが、「づくし」「だらけ」にすることです。

 1つのテーマについて、掘り下げられるだけ掘り下げる。

 これだけほかに掘り下げているヤツはいないだろう! と思えるだけ、
掘り下げる。


 例えば、ファンタジーというジャンル。

 指輪物語から連綿と続く正統なファンタジーを掘り下げてみる。


 例えば、ダンジョンという空間。

 ダンジョンとはいったいどういうところか? その恐怖は? 魅力は?

 それをとことん掘り下げてみる。

 恐くて動けないくらいの空間を作ってみる。

 むっちゃ濃い設定の地下世界を作ってみる。


 ちょっと脱線しますが、私は昔の小・中規模なゲームの魅力は、こういう
「ひとつの世界が完結している」ところにあると思っています。


 ゲームプレイヤーは、確かに「ゲームの面白さ」にも期待しているのですが、
同時に、

 

「世界」

 

を買っているわけです。


 かっこいい世界、活躍できる世界、美しい世界、ニヒルな世界。

 あなたの好きな世界観はどんなものでしょうか?


 ゲームが持っている豊かな「世界」を、プレイヤーはコレクションしている
ところがあるんですね。


 それはなんのためかというと、

 

ライフスタイル
~~~~~~~~~~~~~~


のため、です。

 そういう世界を持っている自分はかっこいい。

 趣味がいい。

 審美眼がある。

 ゲームを買うことによって、そういうライフスタイルを表現しているんです。

 持っているもので、その人がどういう人かが判断されますから。


 のめりこめる世界は、プレイヤーにとって「宝」です。

 その「世界」がゲームシステムの面白さでのめりこめればなおさら「宝」の
価値はあがります。


 話が脱線しました(笑)。

 まとめましょう。

 リサーチすることで、競合がいなくて、自分がナンバーワンになれるポジションを
探します。

 方法は2つで、


1・ジャンルを絞って、自分が1番面白いものを作れるジャンルを狙う

2・「づくし」「だらけ」にしてどこにも負けない掘り下げたゲームを考える


 です。

 これをすることで、そのポジションでトップを取るわけです。

 そうすれば、影響力のある、強いポジションを得ることができます。


●2・ターゲッティング


 ターゲッティングとは文字通り「標的を定める」ということです。

 例えばダンジョンゲームでナンバーワンになる、と決めたときに、
ではどういう人たちに向けて作品を作ればいいのか? ということを考えますね。


 ダンジョンゲームといっても、アクションなのか、それともターン制のゲーム
なのかで、狙う層は変わります。

 アクションであれば割とゲームにどっぷりと使っている小中・高校生などが
ターゲットになりやすい。

 ターン制のスタティックな(静的な)ゲームであれば、割と広い層を
狙うことが可能です。

 プレイヤーの指先的な技量を問わないからです。


 これが決まると、ゲームのグラフィックはどうするのか、音楽はどうするか、
などということが、おのずと決まってきます。


 アクションゲームプレイヤーはコアなゲームファンが多いですから、
割と激しい、血が飛び散るような刺激的な世界観のほうが喜ばれる傾向がある。

 逆にスタティックなゲームは、どちらかというとパズルのような思考型の
ゲームになりやすいので、まったりとしたおとなしい世界観がマッチしやすい。


 人には、例えばインドアな人が読書や映画鑑賞などの趣味を好み、
アウトドアな人がキャンプやトレッキングなどの趣味を好むように、好みの
傾向があるわけです。

 趣味がわかれば、その人にどういうものを提供すれば喜ばれるのかが
わかるということですね。


 もちろん、あえて逆を狙ってギャップを出してみる、という手もあります。


 そうすることで今までにはないターゲットを掘り出す、作り出すということを
狙ったりするんですね。


 ゲームではないですが、iPodは、これまで機能性を前面に出した
音楽プレイヤーしかなかったところに、シンプルでデザインがよく、カッコイイ
人たちが使っている...というイメージで投入されました。

 まさにそれを持っているとカッコイイ、そういう「ライフスタイル」を自分も
得たい、という欲求を狙ったわけです。


 これに関連して今のゲーム業界が残念なのは、固着したスタイルのゲームしか
提供していないところです。

 使い古されたファンタジー、SF、かわいいキャラ物、マンガなどの版権もの。

 明らかに最小公約数を狙った、特定の世界観が好きな人たちだけがターゲットに
なっている。


 先日、「巨人のドシン」の飯田さんと話したのですが、飯田さんは意識的に
業界の「キワ」(極)を狙って、目的意識の薄い、芸術指向の強いゲームを作って
いたと言っていました。

 だから、ゲーム的にはイマイチでも、新しいスタイルが注目され、それを
欲しがった人たちが集まり、話題になったわけです。


 ターゲッティングでは、ターゲットとする人たちの趣向の大枠を知り、そこに
向けて確実にキャッチーさを作り出すという方向性と、それから抜けて際立つような
スタイルを提供できないか、というチャレンジの2つの方向性があります。


 私がお薦めするのは、やはり新しいスタイルを提供する方向性です。


 特に現状のゲーム業界はゲーム内容が画一化しているので、多様性の中から
新しいヒットを生み出すためにも、意欲的なチャレンジが必要です。


●3・エモーション・トリガー

 エモーションとは、「感情」のこと。

 感情は私のゲームデザイン手法「エモーショナル・ゲームデザイン」の
コアになる概念です。

 

 人は自分の感情を変えたくて、すべての行動を行なう。
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ポジショニングにおいても、そのポジションが人の感情を動かすことが
できなければ、結局は埋もれてしまうことに繋がります。

 だから、感情を動かす「トリガー」が、ポジショニングのときに考え
られていなければなりません。

 いくら自分でいいポジションを考えたと思っていても、それが実際に
「革新的な市場」として市場に影響を及ぼさなければ意味がない。


 だからポジショニングには「感情起動要素」、「エモーション・トリガー」が
必要になります。


 では、「エモーション・トリガー」にはどういうものがあるのでしょうか?


 まず、強い要素としては「SSV」があります。


・SEX
・SPEED
・VIOLENCE


です。

 これはメルマガのバックナンバーで詳しく説明しているので見てください。

 簡単に説明すると、
 SEXはいわずもがな、本能の要素です。

 SPEEDはギリギリ感と、と生と死を連想させる要素。

 VIOLENCEは暴力。
 暴力は最も単純に(そして安易に)「支配」を実現する要素です。
 映画だとタランティーノ監督、北野武監督は、この要素を使って映画を
ヒットさせていますね。


 これらの要素は単純ですが、強力です。
 ただ、あまりにも安易なので、世の中ではこれらの要素をアングラなものに
位置付けたり、忌み嫌うものとして位置付けたりしています。

 いろいろな意味で取り締まりの対象でもあります。


 「SSV」はあまりにも強烈なので、一般人向けにこれを弱めた形があります。

 それが「GTP」です。


・GENDER
・TEMPO
・POWER


 GENDERは性差。
 要するに、エロゲーがギャルゲーになるようなことです。
 直接的な性表現はなくなり、男女間で起こるあれこれの表現になります。

 TEMPOは緩急。
 テトリスで言うと、スピードアップしたブロック落下速度が、一旦遅くなって
安堵感を誘う流れ...そういったテンポの調整による感情起動です。

 POWERは力。
 暴力の表現にも、強弱があります。
 例えば血が出る、出ない。
 また力を行使するキャラクタがマリオだったりアンパンマンだったりすると、
とたんにかわいい暴力になったりします。

 暴力は悪のイメージが強いですが、単なる「力」だと現実的な正義にもなる。


 「SSV」「GTP」は本能に根ざした要素なので強力です。

 およそほとんどのゲームや小説、映画はこれらの要素で彩られています。


 これ以外にも、例えばカイヨワの4要素があったりします。


・競争 アゴン 運動競技、ボクシング、チェス
・偶然 アレア じゃんけん、くじ
・模擬 ミミクリ 子供の物真似、人形、仮面、演劇
・眩暈 イリンクス メリーゴーランド、ブランコ、スキー、登山


 こうした感情起動要素の1つに特化するのも、ポジショニングの方法の
1つです。

 「うちはボクシングゲームのみで行く」みたいに具体的な1ジャンルに
特化するとインパクトは強まります。

 ただあまり具体的にすると、流行り廃りに流されやすくなるので、
例えば「体感ゲームに特化する」という「軸」を持つのが、安定を生みます。


 普通は、こうした感情起動要素を複数組み合わせて、それを自分の
ポジションとすることが多いです。
 これは意図せずとも、自然にそうなります。

 例えば


 アクションゲーム + VIOLENCE + アゴン


 のポジションとかですね。

 ほかにも感情起動要素はさまざまにあるのですが、 肝心なのは、
「埋もれないようにする」ことですから、他に似たような
「エモーション・トリガー」を売りにしていて、しかも強い競合がたくさん
いる場合はそのポジションは狙わないことです。

 あくまでもナンバーワンを取る事が大事です。

 

最後に、ポジショニングにより、確立すべき3つの要素を説明して
終わりにしましょう。

 その3つの要素とは、


1・デザイン

2・メッセージ

3・センス


です。


1・デザイン

 グラフィックだけを見て、「あの会社のゲームだ」とわかるゲームが
ありますね。

 アップルの製品も、見ただけでわかります。

 ソニーのシンボルロゴのついた製品は、見ただけで質の安心感があります。


 デザインは一瞬で見た人に「ある感情」を感じさせます。

 優れたデザインは、安心、重厚、ワクワク、美麗など、見た人に「良い」
感情を感じさせます。


2・メッセージ

 インターフェイスが作りこまれたゲームは、それだけでそれを作った
開発元の開発力の高さ、質の高さを伺うことができます。

 グラフィックデザインの質も同様です。

 鋭い「こだわり」を感じる商品に悪い印象を持つ人はいません。

 これは、商品としてのメッセージ性です。


 また、人気のある商品が持っているメッセージは、1つの共通点があります。

 それは「多数派に媚びない自由」というメッセージです。

 このメッセージは、時に敵対的な感情を多数派に向けます。


 マックファンのウィンドウズに対する敵対意識。

 りナックスファンのウィンドウズに対する敵対意識。

 フェラーリファンの大衆車に対する揶揄。


 こうした敵対意識は、結果として「仲間意識」を強めることに繋がります。

 ユーザー間のつながりが強まれば、その製品に対する熱も上がります。

 

3・センス

 センスとは、なにを取り入れ、なにを捨てるかの取捨選択の信念です。


 デザインを取るか、機能を取るか。

 仕事を取るか、遊びを取るか。

 ゲームの完成度を取るか、ゲーム世界の豊かさを取るか。

 期日を取るか、お客の満足を取るか。


 そういった選択の中に、1つ貫かれる信念を持って、製品を作る。

 そのセンスに共感した人たちが、その会社、その人が作るものを買い続ける。

 製品に対する明確な信念が買い手に伝われば、ゆるぎない信頼が生まれます。

 

 この3つが明確にお客さんに伝わったとき、そのポジションは「ブランド」として
認識されることになるんですね。


 ということで、以上、ポジショニングについてでした。


 

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