アバウト・デザイン(2)

 

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●デザインとマーケティング

 デザインがテーマなのにそれと対極にあるようなマーケティングが出てくる
とは、はて...?

 前回の最後で、そう思った人は多いんじゃないかと思います。

 デザインっていうのは計算されながらも自由に思うがままにできるものじゃ
ないのか? そうだからこそ魅力があるし、芸術的な側面も出てくる。

 デザインというのはもっと抽象的で、とらえどころのない、センスが出ると
ころだろう。誤解を恐れずに言えば、他人にあれこれ言われないところではな
いか。


 それに対してマーケティングというのは、要するにアンケートなどでお客の
ニーズ(なにを必要としているか)を割り出し、それに沿ったモノを作る手法
を言うのではないのか。

 だから、出来上がるものは確かにニーズを満たしているかもしれないが、そ
こからデザイン的なセンスを感じさせる新しいモノは出てこないのではないか。

 その真逆にあるような2つが、どう関係しているというのだ?


●デザインとは

 はい。
 まず、私の観点から言うと、デザインというのは、多分に計算の入ったもの
です。特に仕事になってくると、必然的に計算が入ります。

 デザインという言葉の定義が、

「行おうとすることや作ろうとするものの形態について、機能や生産工程など
を考えて構想すること。意匠。設計。図案」

 というところからも、それは言えると思います。


 で、その計算というのは、なんのための計算かというと、最終的には人を動
かすためです。人の感情を揺さぶるためのもの。
 人の感情を動かす構想や設計には、緻密な計算が入ってくるものです。

 デザインして作られたものを人が見て、「ふーん」で終わったんじゃだめで
すよね(それが自己満足か、暇つぶしか、なんとなく作ったものなら別ですが)。

 「おおっ! こ、これは...」と、人の気持ちを動かすものが、やはり良いも
のだと評価されます。

 作ったほうも、そういう反応があったほうが「作ったかいがあった!」とい
う喜びがあるもの。


 だから、簡単に言うと、意識するにしろしないにしろ、デザインというのは
人の感情を動かすために行なわれる行為だと思います。

 特に仕事に絡むデザインは、人の感情を動かすことに焦点を当てます。
 広報活動にしろ制作にしろ、人の心を動かさないものは商売になりません。

 人の心を動かすものに、人は価値を見出します。

●マーケティングとは

 それからマーケティングですが、私の観点から言うと、マーケティングとい
うのは「科学」です。なぜかというとマーケティングには実験とその検証、そ
して結果のフィードバックというサイクルがあるからです。

 一般に、マーケティングは以下の3つの段階に分かれます。

1・イノベーション
2・数値化
3・マニュアル化

 イノベーションとは「改革」です。
 今までよりもさらによい結果を得るために、実験的に新しい施策を試します。
 よい結果とは? これも、人の心をいかに動かしたか? そこに焦点があり
ます。
 たとえば、広告。キャッチコピーを変えてみて、反応を試す。
 先週使ったコピーでの商品購買率は1%だった。
 今週コピーを変えてみたら、購買率が3%になった。
 ということは、当然今週のコピーの方が優れている。
 次は新しく考えたコピーを出してみて、3%を越える反応率を目指す。
 (新しいコピーは一部の地域でだけ試す)

 こういう実験を繰り返しながら、購買率を10%を目標に上げていく。

 今までのやり方がだめなら、やり方を変えてみる! なんでもいいから!
 それがイノベーションです。


 数値化とは、イノベーションの結果を数値化して蓄積することです。
 先ほどの購買率です。

 数値という客観的な指標を得ることで、「どこをイノベーションすればいい
か?」「どうイノベーションすればいいか?」が分かってきます。

 先ほどの例で言えば、購買率が上がったか下がったかが分からなければ、手
の打ちようがありません。

 ウェブサイト構築の例で言うと、数値化があらゆるところで行なわれていま
す。
 そのページに何分滞在したか、どこをクリックしたか、どのページが一番ア
クセスが多いか、どのページから来たか、どの箇所でページから離れたか、な
どなど、お客の動向がその数値でつかめるわけです。

 そうすると、どこが悪いか、どこを直せばいいかが見えてくるわけですね。


 マニュアル化とは、数値化によって得た良い結果を、「誰でもできるように」
書面化する作業です。

 有能な人におんぶにだっこで仕事を進めるのは、会社としては得策ではあり
ません。なぜなら、その人が病気や事故に会ったり、「おれがいないと仕事に
ならないでしょ? だから給料2倍にしろ!」などと不当な要求をしたりなど
で仕事が滞るようになってしまったらどうでしょうか?(さすがにそんな人は
いないと思いますが...(笑))

 会社の経営はその人に振り回されることになります。

 だから、業務のマニュアル化を進めて、質の高い業務の進め方を経営のシス
テムに組み込んでしまうのが得策なのです。
 誰がやっても質の高い仕事を維持できるようにするのが、マニュアル化の目
的です。

 実際、大手の会社は抱える人数が多いので、そういったマニュアル化・シス
テム化を進めなければ会社を維持していくことができません。

 そしてマニュアル化は、これが最も重要なことですが、ノウハウの蓄積にな
るのです。


●デザインの中のマーケティング的手法

 さて、デザインとマーケティングの概念の説明をしましたが、早い話が、デ
ザインを進める過程の中に、マーケティング的な考え方がある人ほど、優れた
デザインができるようになる、ということです。

 マーケティングとは、ある物事を改革を繰り返して良くしていく手法にほか
なりません。
 自分のデザイン(構想や設計)をよりよいものにしようと思えば、勉強して
いろいろな改革の手法を試すことになるわけですから、それはマーケティング
の考え方と符合します。

 マーケティングは単にお客のニーズを数値的に捉えるだけのものではありま
せん。イノベーションの段階で、あらゆる斬新な手法を用いることができます。

 イノベーションは、まず小さく実験して、結果がよければ大きく採用すると
いうローリスクな方法を取りますから、斬新な手法も「とりあえず結果を見る」
ことで、可能性を試すわけです。


 さてゲーム業界にいる私が声を大にして言いたいのは、こういったイノベー
ション・テストが全く行なわれていない、ということです。

 もっと言えばマーケティングの考え方が浸透していないので、どこかで見た
ようなゲームを量産するしかない「脳ミソの手詰まり」状態にならざるを得な
いんじゃないかと思います。


 こういう話を聞いたことがあります。
 ある女性が、自分に合った趣味がわからず、悩んでいました。

 そこで、月謝は大変ですが、一度に6つの趣味を始めてみることにしました。
 生け花、英会話、料理教室、絵画教室、カクテル作り、写真教室。

 普通の人は、こういうことはしません。半年おきごとに1つ1つやってみて
試します。しかし、この女性は早く自分の趣味を見つけたかったのです。

 ただし、2ヵ月後には4つに絞り、4ヵ月後には2つに絞り、と、あらかじ
め数を少なくすることを決めていました。

 そうして、この女性は自分がもっとも得意で、しかも長続きする趣味を発見
することができました。今ではその趣味で大きな商売を始めるまでになったそ
うです。


 ここで示唆されるのは、とにかく一度にたくさん試してみることで、早く得
意な分野が分かり、成功も早い、ということです。
 失敗を早くしてしまうことで、成功も早くつかむことができる、ということ
ですね。


 ちなみに、ゲーム業界では企画レベルでのコンペがよく行なわれていますが、
私はあれはほとんど意味がないと思います。

 見る側の「ゲームはこうじゃなければいけない」という固定観念フィルタが
かかりすぎるからです。

 それから、面白いゲームの内容を考えられる人の企画でなく、プレゼンのう
まい人の企画が通る。これはよくよく考えると、歪んでいるんですよ(伝える
スキルを上げなくてもいいという意味ではないです)。
 市場が本当に必要なものはなんでしょうか?


 グラフィックは記号的でいいし、プログラムもミニゲームレベルでいい。
 とにかく遊べるものを作り、感触を試す(これを「マスを用意する」と言い
ます)。

 実際に面白さの核部分をテスト・バージョンで作って遊んでみなければ、感
覚的な部分はわかるはずがないと思います。

 

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